阿部知二
(あべ ともじ)1903~1973年。享年69。岡山県出身。東京帝国大学英文科卒。小説家、評論家、英文学者。
学生時代より短歌・詩・戯曲等を発表し、同人誌「朱門」に参加する。卒業後は「文芸都市」同人となる。1930年「日独対抗競技」で文壇に登場、同年短編集「恋とアフリカ」、評論集「主知的文学論」を刊行し、新興芸術派の有力な一員として注目される。1936年「文學界」に連載した『冬の宿』は、単行本化されると非常な売れ行きとなった。また、戦争下の長編『風雪』(1938~1939)は、ファシズムに対する自由主義の立場からの抵抗を示した作品であった。戦後は『黒い影』『おぼろ夜の話』(以上1949年)などで敗戦後の知的青年の苦悶を描く。大学で教えながら多くの作品を残し、1958年、文芸家協会代表としてソビエトを訪問し、1965年にはベトナム反戦統一行動を呼びかけた。代表作に評論集『ヨーロッパ紀行』(1951年)、長編小説『日月の窓』(1957~1958年)などがあり、文学の翻訳も多い。