高井有一
(たかい ゆういち)1932~2016年、享年84。東京都出身。早稲田大学英文科卒。小説家。本名は田口哲郎(たぐち てつお)。
少年時に両親を失う。大学卒業後、共同通信社に勤務するかたわら、1964年に立原正秋らと同人誌「犀」を創刊。戦争末期の疎開による喪失感のなかで投身自殺を遂げる母を描いた小説『北の河』(1965年)により、第54回芥川賞を受賞。内向の世代の作家の一人として、『霧の湧く谷』(1966年)、『谷間の道』(1968年)などの短編や、青春への鎮魂歌ともいえる長編『虫たちの棲家』(1973年)などを発表。戦争の時代を生きる市井の人々の日常と一人の女性の成長を描いた『この国の空』(1983年)で第20回谷崎潤一郎賞、老夫婦の日常生活を通して現代家族の風景を描く連作短編集『夜の蟻』(1989年)で第41回読売文学賞を受賞した。ほか第26回大仏次郎文学賞を得た長編『高らかな挽歌(1999年)、「今日、昭和が終った。」で始まる、私小説的恋愛小説でしかも歴史小説の長編『時の潮』(第55回野間文芸賞)などの作品がある。