外村 繁
(とのむら しげる)1902~1961年。享年58。滋賀県出身。東京帝国大学経済学部卒。小説家。本名は外村茂。
富裕な近江商人の子として生まれ、大学在学中の1925年に三高以来の友人梶井基次郎らと同人誌「青空」を創刊し習作を発表する。卒業後家業を継ぐため一時文学を断念するが、1933年『鵜の物語』を書いて再出発を遂げる。「麒麟」「世紀」などの同人となって商店ものの諸作を執筆するなかで、1935年、第1回芥川賞候補となり、後の『筏』(1954~56年)、『花筏』(1957~58年)と三部作をなす『草筏』を起稿、3年後に完結する。戦後は亡妻の死を悼んだ『夢幻泡影』(1949年)、自身の性欲史を描いた『澪標』(1960年、第12回読売文学賞受賞)等を発表。私小説作家として活躍する。遺作となった『落日の光景』(1960年)では、死と向き合った心境が静かな筆致でつづられている。